【感想】秀逸なオリジナル展開による膨らまし方がお見事【岸辺露伴は動かない 懺悔室】

こんにちは。
今回は2025/05/23公開の『岸辺露伴は動かない 懺悔室』を鑑賞してきたので、感想・レビューを書いていきます。
TVドラマシリーズとして展開し、多くのファンを獲得した高橋一生主演の実写版岸辺露伴シリーズ。
初期シリーズ放送後も人気は止まらず3度の続編、映画化と展開を続けた。
そしてファン待望の劇場版 第二弾が本作となります。
前作『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』から約2年ぶり。
ここにきて原作における最初のエピソード「懺悔室」が題材。
原作は49Pしかない短編だが、本作は110分ある映画。
一体どう膨らませて描かれたのか――。
いやぁワクワクしながら映画館へ足を運びました。

-公開日
2025/05/23
-上映時間
110分
-監督
渡辺一貴
-脚本
小林靖子
-原作
荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない 〜エピソード16:懺悔室〜』
高橋一生│岸辺露伴
飯豊まりえ│泉京香
井浦新│田宮
玉城ティナ│マリア
戸次重幸│ソトバ
大東駿介│水尾
感想・レビュー
全編ヴェネツィア撮影の魅力
本作の制作が発表された時点から本作最大の目玉として告知されていた「全編ヴェネツィア撮影」について。
正直いうと邦画で海外ロケを売りにした作品にはあまり良い印象がなく、せっかく海外なんだからと街の風景を撮るために無理やり意味不明な引きの絵を挟んだりして「海外で撮りました!」感はあるけどそれが映像として良い効果を産み出してるかというと微妙だったりすることが多い。
で、本作はというと、めちゃくちゃ良かった。
いや本当に良かった。
作品冒頭で露伴が立つ荒廃した土地。
本作最初のヘブンズ・ドアー発動シーンでの暗い裏路地。
懺悔室へ露伴が辿り着くシーンでの人気のない教会の雰囲気。
夜のヴェネツィアで細い路地を歩き回る露伴。
あえてヴェネツィアの美しい景観ばかりを映さないことで本作の持つ不気味な雰囲気と馴染み、より一層魅力を増すことに大貢献していたように感じた。
ヴェネツィア撮影でしか得られない魅力が本作には確かにあったし、TVドラマではなく劇場版らしい作品に仕上がっていたと思います。
鬼気迫るキャストの演技
井浦新、戸次重幸、大東駿介。
彼らが魅せてくれるジョジョ世界にいても全く違和感ないと思えてしまうほどの鬼気迫る演技が本当に素晴らしかった。
本作を語る上で絶対に外せない魅力だと思います。
実は3人ともかなりの原作ファンであり、それも良い影響を与えていそう。
ジョジョ世界は本当に唯一無二な世界観なので、原作を愛しているからこそ「あの世界にいる人間ならこういう生き方や雰囲気をしているんだろう」というイメージがバッチリ出来ているのではないかなと。
もちろん一視聴者の勝手な想像ですけど。
もっと言うと井浦新演じる田宮は、原作の範囲だと懺悔をしにきた語り手でしかなく名前も無いキャラクター。
つまり実質新キャラといってもいい役柄です。
なのに全く作品のイメージを崩すことなく、とても不気味で気持ち悪い、まさにジョジョ世界に相応しいキャラクター像が完成していました。
いっそそのまま漫画に登場して欲しいくらい良かったです。
49Pの短編を110分の映画に
本作を観に行く際に一番楽しみにしていたのが、原作では49Pしかない『懺悔室』という題材をどうやって110分の映画に膨らませているのかというポイント。
ドラマシリーズでは他エピソードと同時進行させることで見事に話を膨らませた回があったりもしました。(第9話 密漁海岸)
毎度その手があったのか!と唸ってしまう手法で楽しませてくれるので、楽しみにせざるを得ないのです。
で、今回は映画オリジナル展開を加えることが事前に発表されていたわけですが、これがまあ素晴らしい出来でした……!
原作範囲の合間合間にもオリジナル展開のために必要な話をいくつか盛り込んでいるんですが、それらが全く違和感なく溶け込んでいて、完全に新たな一本の物語として完成されていました。
当然ドラマシリーズおなじみ飯豊まりえ演じる泉京香も登場するのですが、彼女も物語の大きなピースとして組み込むことに成功してましたね。
本作の終始暗くて不気味な雰囲気のエピソードに相変わらずの天然おバカっぷりが程よい息抜きとして作用しています。
オリジナル展開部分の具体的な話をすると――
- 注意:ネタバレあり
-
原作では描かれなかった語り部のその後を描く物語になっており、原作を補完するようなエピソードが描かれます。
「このあと 彼がどうなったのか…この岸辺露伴はまだ知らない…」
原作ラストにあるこの語りを拾った形にもなっており、とても自然で気持ちがいい展開でした。オリジナル部分は原作の不気味な話というよりサスペンスやミステリーに近い話になっているのですが、十分に面白い話だったと思います。
物語の主軸は「幸福とはなにか、絶望とはなにか」。
呪いの影響で漫画の発行部数がうなぎ上りになったり、当たりの宝くじが足元に落ちていたりでブチギレた時の露伴先生には思わず笑ってしまいました。
幸福と絶望の定義は人それぞれ違うもの。
当たり前のようで意識したことのなかった思考で考えさせられましたし、なによりとてもジョジョらしいな、と。
まとめ・総評
前作『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』も好きですが、正直TVドラマの特番感があって映画としては物足りない感じがありました。
その点でみると今作はヴェネツィアロケが上手くハマっており、劇場版らしい特別なスケール感の演出に成功しています。
なので私は圧倒的に今作『岸辺露伴は動かない 懺悔室』の方が好きです。
また全体的に原作『岸辺露伴は動かない』の雰囲気に近かったのも特徴かなと。
ばっちり終始不気味で暗かった。
個人的にこれはかなりのプラス要素でしたね。
もちろんドラマシリーズならではの少しユーモアのある演出も好きなんですが、懺悔室のエピソード自体かなり不思議で奇妙な話なので、これで正解だったと思います。
明るい雰囲気があったの泉京香ちゃんが絡んでくるシーンだけじゃないですかね。
ラストにもふふっと笑わせるやり取りありましたし。
まだまだ続いていってほしいシリーズですね。
本作を観て、改めてそう思いました。
面白かったです。